研修委員 大島 直人
[はじめに]
人工知能(AI)は物凄いスピードで進化しており、昨今、弁理士としてAIとどのようにかかわっていくか、ということが重要な問題として議論されております。そこで今回の研修は2部構成とし、まず久我貴洋先生が「AIが自律的に創作した著作物、どう扱うべきか」というテーマで講演してくださり、次に湯浅竜先生が「知財業務におけるAIの進出と活用」というテーマで講演してくださりました。
今回は、無名会新人研修として、弁理士試験の近年合格者の方を中心にお声がけをし、合計39名の方にご参加いただきました。
[講義の内容]
●第1テーマ「AIが自律的に創作した著作物、どう扱うべきか」について
まず、人工知能やAI生成物についてご説明いただいたうえで、「AI創作物の著作権法上の保護」について、学習済みモデルの利用者が(創作的寄与が認められないような)簡単な指示を入力した結果出力されたAI創作物は、現行の著作権法上、著作物と認められていないことをご説明いただきました。続いて、AI創作物を著作権法上保護しない場合の問題点、著作権法上保護すべきであるとした場合の必要な著作権法の見直し等、についてご解説いただきました。
●第2テーマ「知財業務におけるAIの進出と活用」について
世間一般でのAIの活用において、ChatGPTの仕組みを簡単にご説明いただき、生成結果がうまく出ないときの対応策や生成事例をご紹介いただきました。続いて、知財業界、特許事務所におけるAIの活用に関して、生成AIを用いた明細書作成、画像生成、発明抽出、発明書提案書作成等について、ご説明いただいたうえで、弁理士としてAIとのかかわり方、AI時代の若手教育問題、今後の単価問題について、ご説明していただきました。
2つのテーマに関する講義後の質疑応答は30分以上に及び、講義内容について、参加された先生と講師との間で白熱した議論が交わされました。
[所感]
第1テーマで学んだ、AI創作物と現行著作権法との関係、特に「職務著作物」や「編集物著作物・データベースの著作物」の考え方を用いた保護の可能性は、弁理士として深く考えさせられました。
第2テーマでは、特許明細書等の作成において、生成AIにより生産性を最大化するためには、実務家として能力を有していることが前提となる実情をご説明いただき、多くの先生にとって、今後のスキルアップを考えるうえで有意義な研修であったように思います。
[懇親会]
研修後には懇親会が開催され、講師を含む25名の先⽣⽅にご参加いただきました。懇親会では、研修内容について熱い議論が交わされるとともに、多くの先生が研修以外の内容についても楽しく会話しており、打ち解けた雰囲気の中で交流を深めることができました。近年の合格者の方にとっては、無名会について知っていただく良い機会になったように思います。

